NvidiaとAMD、米政府との収益分配契約は「独特」と評価
2025-09-16
EE Timesの関係者が伝えたところによると、NvidiaとAMDが締結した「独特な」取引では、中国での売上高の15%が米国政府に納付されることになるが、おそらくホワイトハウスが輸出規制を緩和する合意も含まれているという。この取引は、トランプ氏が今後数週間以内に米国へのチップ輸入に最大100%の関税を課す意向も表明している中で行われた。
フィナンシャル・タイムズ紙など各メディアは8月11日、NvidiaとAMDが米国政府と収益分配契約を結んだと報じた。米ホワイトハウスは自らのサイトでコメントを発表していない。
NvidiaはEE Timesに対し、「当社は世界市場への参入に関する米国政府の規則を遵守している。H20の中国への出荷はここ数カ月行っていないが、輸出管理規則が米国に中国および世界での競争を可能にすることを望んでいる。米国は5Gの二の舞を避け、通信分野での主導権を失ってはならない。競争をすれば、米国のAI技術スタックが世界標準になる可能性がある」との声明文を発表した。
トランプ米大統領の政権は7月中旬、中国向けNvidia H20の輸出管理規則を撤廃した。Nvidiaは、中国での売上高の一部を米国政府に移転するかどうかに関するEE Timesの質問に回答しなかった。AMDもEE Timesに返答しなかった。
TechInsightsのダン・ハッチソン副会長はEE Timesに対し、輸出規制緩和と引き換えにAMDのMI308とNvidiaのH20の収益を分配する契約は「独特」だと語った。トランプ政権の動きはテストケースであり、「逆関税」政策によって大統領権限の新たな章の始まりを告げるものだと付け加えた。
ハッチソン氏は「中国政府がNvidiaとAMDのAI半導体の中国での売上高の15%を取得するのは独特だ。トランプ氏は関税が好きだと公言しているが、逆関税を考案するという非常に創造的なことをしている。特定の外国向け販売に対し、製品および企業別に課税した事例は知らないし、見つけられない」と語った。
Futurum Groupのレイ・ワンリサーチディレクターはEE Timesに対し、前例がないとは言わないまでも、この取引は稀だろうと語った。
ワン氏は「AMDとNvidiaからの資金を米国政府がどう使うのかは不明だが、世界的な関税措置に並ぶ収入増加のための別の手段になり得る。とはいえ、既存の輸出管理が維持されている中で、政権がより多くのAIチップの無制限の中国への販売を許可するとは思わない」と語った。
2024年のAMDの収益に占める中国の割合は24%、Nvidiaは13%だった。トランプ氏はH20によるNvidiaの中国での収益の最大20%を要求する可能性がある。
ロイター通信はトランプ氏が「H20は時代遅れだ」と発言したと報じ、中国がどういうわけか禁じられたH20を大量に手に入れたことを示唆した。同通信はトランプ氏の発言として「『国のためにこれを承認するなら20%を要求する』と伝えた」と報じた。
Nvidiaのジェンセン・フアンCEOは、米中技術戦争が激化する中、停戦を交渉するためここ数カ月ワシントンと北京を何度も往復している。
この取引は、トランプ氏が今後数週間以内に米国へのチップ輸入に最大100%の関税を課す意向も表明している中で行われた。
ウェルズ・ファーゴのアーロン・レイカーズシニアチップアナリストはCNBCのインタビューで、米国政府との契約により、NvidiaのH20の中国での販売は「ないよりまし」になるだろうと語った。
気まずい前例
カウンティポイントリサーチのニール・シャア副社長は声明文で、「異例の契約」は短期的および長期的にすべての関係者にとって気まずい前例を作ると語った。
シャア氏は「チップメーカーにとって、世界のスマートフォンからサーバーに至るほとんどの製品が中国で製造されていることを考慮すると、縮小するアドレス可能市場を拡大することでいくらかの救いとなる。また、米国政府が承認しない国や企業に対して、収益の一部を米国政府に納付するという危険な将来の前例も作る。技術的には、原産地での間接関税だ」と語った。
同氏は、技術エコシステムにとって、この契約は貿易均衡をいくらか回復するが、財政的および地政学的に大きな代償を伴うとし、同様の契約によって一部の経済圏が同様のアクセス料を採用するためのてこを得て、貿易戦争をさらに助長する可能性があると付け加えた。
シャア氏は「こうした展開により、すべての関係者の間で信頼の毀損がじわりと広がっており、これによって経済圏を超えた技術と貿易の分断がさらに加速するだろう」と語った。
ワン氏は、トランプ政権が過去の北京との交渉で顕著な譲歩をしたが、今後の交渉でさらに譲歩するかどうかは不確実だと語った。
同氏は「今回の措置を中国との広範な技術競争政策の転換とは見ていないが、収益分配アプローチは、それが1回限りの異常な事例なのか、それとも新たな政策パターンの始まりなのかを判断するために注意深く監視する価値のある展開だ」と語った。
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